2013年10月28日月曜日

東山千栄子さん① フランスでのお買い物



少し前のブログに書いた東山千栄子さんの自叙伝「新劇女優」、とても面白かったのでちょっとご紹介。文筆が本業ではないので、わりと文章はたどたどしいのだけど何やら言葉遣いとお嬢さんとも天然とも言える不思議な視点が面白くて止まりませんでした。
帝大で国際法の教鞭をとっていた養父の家でお嬢さんのように育った「せん」さん(本名)は結婚してからすぐに旦那様のお仕事でモスクワへ行き、その間語学や社交のお勉強のために単身仏蘭西(リヨン)へ短期間行きました。そこでは・・・
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ようやく少し買物位出来るようになって、一人で外出しますと、ふらんすの都会のそれは美しいこと、ちょっとした店をのぞきましても、買手を待っている品々がどれもゝ洗練された意匠、すぐれた感触、単に欲しいとか欲しくないとかの境を超えて、私はもう一つ一つが持っている芸術的魅力に深く惹きつけられました。
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わ…わかる!!!!「単に欲しいとか欲しくないとかの境を超えて」というのが、なんとも理解できます。これまでいつも女中がいて自分でお金を持って買い物なぞしたことのないようなお嬢様だった東山千栄子さん、このフランス滞在中サインひとつで好きなだけ銀行からお金をおろして買い物ができる環境だったため、キレイな金貨をおろしては何でも買ってしまい、銀行の残高を見て吃驚した旦那様からすぐモスクワへ戻るよう言われてしまい、4ヶ月しかフランスへ居られなかったことを悔やんでいました。
写真は当時ベルリン第一級の洋服屋に作らせた昼の礼装ローブ・モンタントと、当時モスクワ一流の男性結髪師理がセットしたウェーブだそうです。